あなたを守るのが、私の役目。
誰にも渡さない。
私だけのもの。

全身全霊をかけて必ず、守り続けます







桜守


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桜を見ませんかって七条さんが誘ってくれた。
そりゃ、嬉しくて、俺は、二つ返事へ了解した。

だってそうでしょ。

俺と七条さんは

あの・・・その
いわゆる恋人同士なわけだし。


二人でいられるならどこでもいいんだけど
やっぱり、イベントっていうのかこういうのは外せない。

朝から張り切ってお弁当を作って。

一人で作れないから、食堂のおばちゃんに手伝ってもらった。

デザートにって、桜もちも用意して。

さすがにこれは手作りってわけには行かなかったから、
美味しいと評判のお店を聞いて買いに行ったけど。

丁度出かけていた七条さんと二人待ち合わせして、そして、
海岸線の先、普段はあまり人の来ない場所にある桜のもとで、二人で仲良くお花見を始めたんだ。



「綺麗ですねーー」

薄紅色の花の合間から、きらきらと春の陽の光の粒が降ってくる。
それがはらはらと舞う花びらに重なって、まるで光のシャワーみたいに見える。
七条さんは、俺の髪に絡まる桜の花びらの一片をそっと指先で捉えて逃がした。
その優美な仕草に、一瞬見惚れてしまった。
自分の恋人に見惚れるって言うのもなんだけど・・・。
ほんと、この目の前の人は、カッコいいんだ。
ここベルリバティには、カッコイイ人が多いけど、その中でも特別に目立つくらいカッコいい。
好きの欲目を省いても、素敵な人だなって思う。

そんなことを思いながらぼーと見つめていていると七条さんが、何かついていますか?と笑った。
俺は、はっと我に返って、すみませんと頬を赤くした。


「それにしてもこんな場所あったなんてしりませんでした」

「ここは鈴菱の研究所の敷地ですからね。
学園の人間は滅多に入ってきませんよ」

どこから持ってきたのか、七条さんは緋毛氈を広げている。
その赤が目に眩しくてじっと見ていると、お花見はこれじゃなくてはね・・・と片目を瞑ってみせた。
確かにあの青いシートじゃ興ざめだ。
俺もこくりと頷いて持ってきたお弁当を広げ始めた。


「でも、、いいんですか?そんな場所」

「大丈夫です。心配しなくてもちゃんと許可はとってありますから」
七条さんはそう言って、ふふっと笑った。




「それにしてもすごいご馳走ですね」
「え、そうですか?」
広げたお弁当をみて、七条さんが呟く。褒められて俺はへらりと笑った。
褒められるととっても嬉しいと思ってしまう。
だって、好きな人には喜んでもらいたいと思うでしょ。

「えへへおれ、ちょっと頑張ってみました」
そんな俺をみて七条さん、すごく嬉しそうに笑った。


「美味しいですよ」
「良かった!」

「君の手料理を食べられるなんて幸せですね」
俺の差し出したお皿を片っ端から片付けながら、そんな嬉しいことを言ってくれる。
俺は、もって来たお茶を渡しながら、えへへ・・・と頷いた。

「七条さんさえよければ、作りますよ。次のお花見もその次も」
「いえ、お花見だけじゃなくて、毎日食べたいです」

「ま・・・毎日って。え!!!!!!^^それって」
さらりと聞き逃しそうになったけど、それってあれ・・なんていうの
すごいこと言われちゃったんじゃないか。
そんな俺の考えてることがわかったのか、七条さんは満面の笑みを浮かべてこう言った。

「うふふ、そうです。いわゆるプロポーズっていうやつですね」

「し・・しちじょうさん」

「僕が嫌いですか?」

「そ・・そんな問題じゃなくて」

「じゃ、好きですか?」

「う・・・・はい」

返事を全部言わないうちに、そっとその腕の中に引き寄せられて
そして、優しい温もりが唇をふさいだ。




「啓太くん」

「な・・なに??」

じっと抱きしめてくれたその人は顔を覗き込むようにして囁いた。
その紫の瞳に、俺の心はトクンとなる。
七条さんは、なんだか嬉しそうな顔で俺をじっと見つめていた。

「僕は、もっと違うものが食べたくなったんですが・・・」
「違うものですか?」
「はい」

もうお腹が空いたのかな??
足らなかったのかな??
好きな人のリクエストにはお答えしなくっちゃね。
俺は、心の中でよし!と声を上げて答えを返す。


「じゃ、次はそれ作りますよ。リクエストしてください」
もし、作ったことがないものでも、ちゃんと勉強して作れるようになってみせる。
大好きな人には喜んでもらいたいもの。


「それが、今食べたいんですけど」
「今ですか??」

「僕の大好物なんですが」

「大好物?」

大好物って・・・。甘いものかな?
ケーキとか、アイスとか。
そんなことをうつらと考えていると、


七条さんがそっとみみもとに口を寄せて、甘く低い声で囁いた。


「君を食べたいんですけど・・・いいですか?」




そして、さっきよりも深くて甘いキスをくれた。




fin






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